ケースワーク「こどもの貧困」38【日本語を母語としない子どもたち 子ども・家庭への支援(後編)】

 『月刊JTU』2013年3月号より、加山 ハナ(小学校教員)氏の「ケースワーク「こどもの貧困」38【日本語を母語としない子どもたち 子ども・家庭への支援(後編)】」の引用。
 「ダブル・リミテッド」という言葉がある。二重に制限されている状態を意味する言葉だが、日本に暮らしている外国籍の子どもたちに関して、日本語も母語もどちらの力も限定的である状態をいうときに使われる。
 日本生まれ、日本育ちの子どもたちの中には、親から母語で話しかけられて日本語で返事をするという子がいる。また、お母さんとはスペイン語、お父さんとはポルトガル語、きょうだい同士は日本語で会話しているという子もいる。この子たちは、複数の言語を習得しているといえるのだろうか。
 私たちは、外国籍の子どもたちが日本語で会話ができると、ついつい「この子の日本語は大丈夫」と思ってしまいがちだ。しかし、日本語で日常会話ができることと、日本語で教科学習に参加できることは、大きく異なるはずである。日本語「を」学ぶことと、日本語「で」学ぶことは異なるからだ。
 私は、自分の興味から英語・韓国語・ポルトガル語を学習したことがある。海外旅行に出かけ、覚えた言葉を使ってみたこともある。しかし、英語で数学を勉強したり、韓国語で理科を学んだりしようとしたことはないし、できるとも思えない。ましてやポルトガル語でブラジルの歴史を勉強しろと言われたら、途方に暮れてしまう。
 日本に暮らす外国籍の子どもたちは、そんな状況に身を置いているだけでなく、親と複雑な会話をすることも難しい。そのことを忘れてはいけないと思っている。しかも、この子たちは自分の意思で日本にいるわけでもない。それでも、進学したり就職したりするために必要な、日本語の力をつけていかなければならないのだ。
 一方、自分の意思で日本に来たであろう親にとっても、日本の学校生活を理解するのは容易ではないだろう。理解してもらいたいのはやまやまだが、理解してもらうためには、こちらからの働きかけが欠かせない。欠席や遅刻が多い子どもの家にはその都度連絡をする。電話に出てもらえなければ家に行く。迎えに行けば登校できるなら朝から起こしに行く。必要書類は翻訳版を渡しただけでは提出してもらえないことがある。学校生活に関する書類だから、もしかしたら読んだだけでは内容を理解するのが難しいのかもしれない。翻訳版の書類を渡すだけよりも、家庭訪問して日本語で直接説明する方が、わかってもらえることもある。その場で、こちらが手伝いながら必要書類を書いてもらうこともできる。
 何度も足を運ぶうちに、「学校の先生はしつこいな」と思ってもらえたらいいと思う。本当は「熱心だ」と思ってもらえると報われるのかもしれないが、とにかくあきらめない姿勢を見せることが大切だと思う。そして、学校とはそういうところなのだと思ってもらえればいいと思う。それが学校への理解の第一歩になることを期待している。

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ケースワーク「子どもの貧困」36 日本語を母語としない子どもたち④ 20年後は・・・?

 『月刊JTU』2012年11月号より、山梨県の今澤悌先生の記事の引用。
 つい先日、20年前に日本語教室で学んでいたという卒業生が、「懐かしくなって」と本校を訪ねてきた。当時勤めていた職員は誰もいなかったので、私としばらく話をした。現在彼は32歳で、原付免許の試験を受けに行った帰りだという。結果は不合格。「まら来月挑戦します」と明るい顔で答えた。日雇いの仕事をしており、正社員の口がなかなかない。あっても遠方が多く、車がないと難しい。まずは原付免許を取りたいということだった。本校卒業後は、中学校に進学。しかし卒業せず、途中で「やめた」そうだ。理由を聞くと「普段の会話は大丈夫だったんです。でも、どんどん勉強がわからなくなってしまって・・・。もうだめだと思って、やめて働くことにしました。その時、職を探しましたが、バイトで2~3時間の仕事しかなくて。しかたなくその仕事をしました。空いた時間はなんとなく過ごしてしまって・・・。正社員の職に就けたのは20歳の時でした。でも不景気になりやめさせられ、あとは日雇いを続けています。正社員の仕事は職安に行ってもないですね」。
 日本語がまだおぼつかない状況で中学を「やめた」彼は、30歳を過ぎた今も難しい道を歩んでいる。なんとか免許を取り、人生をよりよく生きようと努力をしている。彼の話を聞きながら、本誌連載の中に書いた内容を思い返した。児童労働、中学を「やめる」問題、そして日本語が不自由な中卒者の就職の厳しさ。彼が公教育を過ごした20年前と現在、状況は変わっていない。この先私たちが何もしなかったら、おそらく20年後も変わらないだろう。今、日本語を教えている子どもたちの20年後は・・・。
 できることに限りはある。しかしそれぞれの立場でこそ、できることがある。現在、日本語指導者共に、できるだけ学習に遅れを出さないように、授業を工夫すること。担任の立場では、授業中できるだけ子どもたちの日本語の不自由な状況を補えるような配慮をし、少しでも理解や表現をしやすいように工夫すること(図や絵、写真等具体物を豊富に、できるだけ単純な文法で単文にして話す、繰り返す、イントネーションを大きく、などのフォリナートークに心がける等)。日本語指導では初期段階からでも、できるだけ早く教科についていくための学習を取り入れていくこと。現場でできないこと、限界があることについては、行政に訴えていくこと。組合に相談すること。支援が困難な状況にあっても、除籍にしたり、支援を怠ったりする等その矛先を子どもに向けずに、行政や組織に子どもたちの状況を訴え、環境改善に努力すること、等々。
 厳しい状況の中に子どもたちがいる。その背中を支えていけるような学校でありたい。また、子どもたちや保護者の状況を、声なき声を丹念に拾い、施策や教育環境の整備に生かしていきたい。そして、子どもたちが生き生きと生活でき、明るい未来が語れるような学校、社会を創っていきたい。子どもたちが20年後、笑顔でいられるように。

ケースワーク「子どもの貧困」35 日本語を母語としてない子どもたち③「就学義務がない」?

 『月刊JTU』2012年10月号より、今澤 梯氏(山梨県)の「ケースワーク「子どもの貧困」35 日本語を母語としてない子どもたち③「就学義務がない」?」の引用。
 「あの子どもたちには就学義務がない」。外国人の子どもに問題行動等があった時によく耳にする。それは、「本来、外国人の子どもは学校での支援の対象ではない」という意味で発している事がほとんどだろう。しかし、本当にそうなのだろうか。
 日本国憲法、教育基本法は、子どもを持つ日本国民の保護者に就学させる義務を課している。ゆえに日本国籍を持たない外国籍の保護者には、子どもを就学させる義務はないのであり、「就学義務がない」対象は外国籍の保護者である。文科省も「就学義務を負う者は、日本国民である保護者であり、外国人の場合はこの義務は課されていません」と述べている。「外国人の子どもには就学義務がない」誤りは明確である。
 日本が批准する国際人権規約及び子どもの権利条約には「教育についてのすべての者の権利を認める」とある。国内法と合わせれば、外国籍の保護者には就学させる義務はないが、その子どもには日本の学校で「学ぶ権利」がある、ということである。保護者が就学義務を負っていようがいまいが、すべての子どもには同じように学ぶ権利がある。
 しかし外国籍の子どもたちが学校を「やめる」という話はよく聞かれる。そもそも義務教育を「やめる」ことは、日本国籍を持つ子どもではありえない。だが、外国籍の子どもたちの「やめる」事例は後を絶たない。問題行動で除籍になる例、また所在不明になったので除籍したといった事例はすくなからずある。このような学校側の意思での除籍や、保護者や本人の申し出により除籍等々、日本国籍の子どもならば、すべて考えられない事例であろう。なぜ外国籍の子どもたちにこのような事が多いのか。それは、「就学義務がない」ということへの誤解があり、「子どもの学ぶ権利」が尊重されていないからに他ならない。支援できない現場の状況があれば、除籍という子どもに向かう方向ではなく、教育環境・社会環境作りの方向に解決策を向けていく事が必要である。「学ぶ権利」を子どもから奪うことは、あってはならない。
 外国人の子どもたちには、社会の中でセーフティーネットがあまりにも少ない。学校が受け皿になり得なければ、ドロップアウトした(させられた)子どもたちの受け皿は、児童労働、非行や犯罪、自殺になってしまう。今の日本社会の中で、日本語で十分な意思疎通ができない、読み書きがままならない状態のまま放り出されたら・・・。それはまさに、「教育の貧困」状態に置かれているといえる。十分な学びを保証されず、社会にセーフティネットもない中では、就学期間後も厳しい生活を抜け出すのは難しい。
 外国籍、日本籍にもかかわらず、すべての子どもたちの最善の利益のために教育環境を整え、受け皿となり得る教育を用意していくことこそ、学校や社会に課せられた、まさに「就学義務」であろう。

世界一大きな授業

 「世界一大きな授業」は、世界で6700万人の子どもが学校に通っていない現状を学び、教育の普及を地球規模で進めるために、自分たちに何ができるのかを考える授業です。
http://www.jnne.org/gce2012/

こども日本語ライブラリ

 文部科学省拠出・国際移住機関(IOM)委託、「定住外国人の子どもの就学支援」事業、年少者学習資料開発(JYL)プロジェクトでは「こどもの日本語ライブラリ」のサイトを公開した。
 このライブラリは、「定住外国人の子どもの就学支援」事業の一環として、「虹の架け橋教室」の関係者をはじめ、子どもの日本語指導・支援等に関わる方々に必要な情報・学習資料等を提供するために開発されました。
★子どもの生活に密着したトピックによる指導計画例
 こよみ、数字・助数詞など毎回ふれてほしい内容を取り上げています。段階的に内容が発展するよう工夫されています。
★サイトオリジナル冊子教材の提供
 トピックに沿って、導入や練習などの活動の組み立て方のアイデアが書かれています。この活動で使う教具の作り方はビデオライブラリ「図工 ペープサート」でみることができます。
★ベテラン講師の指導のヒント満載のビデオライブラリ
 さまざまなテーマで指導方法や指導上の留意事項等を動画でわかりやすく提供します。
【発音・リズム】音声指導の知識 ベルボトナル法の考え方
【継続指導】カレンダー
【文字・漢字】ゲーム方位すごろく など
★漢字圏出身の学習者に配慮した文字・語彙指導計画例
 漢字圏文字・語彙指導計画に基づいた「漢字練習帳」、「ことばの練習帳」等、母語対応の教材もあります。
★充実した基本検索機能
 現場の多様なニーズに応えるため、各種検索機能を取り揃えました。
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