午後8時の職員室

 『内外教育』2015年5月19日より、「午後8時の職員室」の引用。
 県立G高校の職員室は、連日午後8時を過ぎても、多くの教員が残っている。その日もいつものように、入り口近くの机で2年生のK君が勉強をしていた。20分ほどすると、彼は担任のS子先生に進捗状況を見せに行き、先生が彼の差し出す手帳に判を捺すと、また席に戻り勉強を続ける。手帳には既に、何種類もの動物の判が捺されていた。
 K君は基礎学力・コミュニケーション能力不足という申し送りが中学校からあった生徒だった。特に教員に対しての緊張は著しく、高校入学当初はS子先生の顔も見られず、会話も全くできなかった。しかし、初めての担任で意欲に燃えているS子先生は諦めなかった。K君が首を縦や横に振る反応は示すことに着目し、「はい」か「いいえ」で答える質問群を用意し、時間をかけながら彼の気持ちや意志を引き出す策を編み出した。
 5月以降、教科担当教員からK君が課題を出さない、指名しても答えない等の情報が次々と寄せられた。結局、1学期は全科目欠点となった。
 S子先生が例の方法でK君に尋ねてみると、彼はこれまでに計画を立て、それに従って勉強した経験がないことが判明した。彼の周囲の誰かが、どうしてそれに気付かなかったのかと怒りを覚えたS子先生が考え実行したのが、先に挙げた職員室での勉強だったのである。少しでも楽しんで勉強できるように、動物好きのK君のためにも判を揃えた。
 そして、その日の計画が終わるまでは学校で勉強すること、確認印を貰う際には、勉強しての感想を一言だけでも話すことを二人の約束とした。
 S子先生の帰宅時間は連日遅くなったが、K君は少しずつ変わっていった。試験の得点が高くなるにつれて、挙動は落ち着き、言葉数も増えた。今では、計画自体を自力で作れるようになった。
 「生徒と真剣に向き合う」。陳腐な言葉だが、それができる教員は希少かつ偉大だ。生徒は教員の熱意が嘘か真か必ず見抜く。睡眠不足を抱えながら、今日もS子先生は本気で生徒と向き合っている。
朝比奈なを(フリーライター・大学非常勤講師)

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勝つと人生が変わる

 2015年4月28日の朝刊の「2020年への金言」より、吉田沙保里の「勝つと人生が変わる」の引用。
 東京五輪まで5年。開催が決まった時は「ぜひ出たい」と口にしましたが、正直、今はまだ選手として東京は見えていません。女子初の五輪4連覇がかかる来年のリオネジャネイロ五輪で頭がいっぱいです。
 まず今年6月の全日本選抜選手権で優勝し、9月の世界選手権(米ラスベガス)の代表になる。そこで日本の代表枠を確保し、世界大会16連覇となる金メダルを取って五輪代表の内定ももらう。近くの明確な目標を一つ一つクリアするのが私の形。スキップせず歩んだ結果が五輪3連覇だと思っています。
 昨年は3月に父を亡くし、秋は世界選手権(ウズベキスタン・タシケント)と仁川アジア大会を違う階級で戦った大変な年でした。父が近くで見守ってくれたので一戦ずつ集中して勝てましたが、アジア大会の1回戦は中国選手にあわやフォール負けの大ピンチもありました。
 日本人も外国人もみんな「打倒吉田」。年々研究もされますし、若い子が伸びる一方なのに対して私はぐっと伸びることがない。重圧に強いと言われますが、常に怖さの中で戦っていることは知ってもらいたいです。2020年を目指す中高生も私のライバル。助言を求められればオープンに教えていますが、私の方から教えることはありません。ただ、一つ知っておいてほしいのは10代から体力をつける大切さです。
 私も昔、体力不足で何度か逆転負けを食らいました。中京女子大(現至学館大)に入ってからは朝練で必死に走り込みました。グラウンド10週やインターバル走、坂道走・・・。長距離走は大の苦手だったけれど、あのつらさに耐えて勝てるようになったのです。
 五輪は勝つことで人生を変えられる舞台。それを自国で経験するチャンスが若い選手にはあります。来年が「東京」だったらな、という思いもありますが、まず全日本選抜で若手に負けないという調整をしていきます。
(レスリング女子55キロ級五輪3大会連続金メダル、ALSOK)

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