FC2ブログ

だから、仕事と心中するな!

 『内外教育』2015年5月15日の「普通の教師が生きる学校 モンスター・ペアレント論を超えて」より、「だから、仕事と心中するな!」の引用。
大阪大学大学院教授 小野田正利
Point
①いつでも・どこでも・誰に対しても「24時間教師」では、疲れてしまいませんか?
②ポキッと心が折れてしまうような、しんどいこと、つらい時はいくらでもあるが、復元力を培おうでなかいか
③代わりの先生はいるよ。でも、あなたの代わりはいない。だから仕事と心中するな!
「教師の心が折れるとき」
 いきなりの衝撃的なタイトルに驚かれたかもしれない。私の主宰する新新・学校保護者関係研究会(通称:イチャモン研)の初期からメンバーの臨床心理士の井上麻紀さんが、今月末に出版する「教師の心が折れるとき-教員のメンタルヘルス 実態と予防・対処法」(大月書店、2015年)の帯に推薦文を「是非とも」と依頼されて引き受けたのだが、私は2つの案を提示した。①「代わりの先生はいるよ、でも、あなたの代わりはいない。だから仕事と心中するな!」②「代わりの先生はいるよ。でも、あなたの代わりはいない。だから心を身体を大切に!」-井上さんはためらわず、強烈なメッセージの「①で」と言った。それは病院の診察室で多くの倒れていく教師と出会い、ふたたび生気を取り戻して教壇に復帰させるプログラムを必死に創り出してきた立場からの、まっとうで切実な思いがあるからだろう。
 井上さんは全国8カ所にある公立学校共済組合の直営病院の一つである「近畿中央病院」(兵庫県伊丹市)の主任心理療法士であり、10年以上の長きにわたってメンタルヘルス(精神保健)相談や休職中の教員のための復帰支援プログラム(職場復帰トレーニング)遂行の中核を担ってきた、教師のこころの専門家である。彼女のところにやってくる教師の特徴は、何でも自分で抱え込んでしまって「できない」ということが言えず「頼む」「断る」ことが苦手だという。
 「仕事と心中はしない」は「第1章 メンタルヘルスケアの現場から見える教員たち」の最初に書かれている小学校教師の事例の中で、たった1回だけ出てくる言葉であるが、私にはズシンと響くものだった。そして教師(校長や教頭)としての仕事が続けられなくなった時に、職務を受け継ぐ代替要員は確保されるが「その教師自身の特質ある職業人として、家庭人として、そしてかけがえのない一人の人間としての代替はいないんだよ!」という意味が込められている良書と思ったから、即座に帯の推薦文が浮かんだのである。
心が折れる前に、曲がる方法もある
 連載86回(12年5月11日号)「保護者対応力向上のためのワークショップ」、第94回(同7月6日号)「先生が元気になる集い イン ○○」で紹介したように、学校保護者関係研究会は、全国各地の教育委員会や公的研究団体との共催で、研究成果の社会還元の一環として、メンバーの特技を生かした各種のワークショップのほかに「大喜利シンポジウム」も実施している。私がかつての三遊亭円楽さん(現在は桂歌丸さん)よろしく進行役となって「お題」を出し、数名のシンポジストにキーワードで回答してもらう方法である。会場から「お題」が出てこない場合もあるので、あらかじめ質問を2つ用意している。1問めは「保護者から教師に、時として浴びせられる激しい言葉のウラにあるものを読み取る術は?」で、2問めは今回のテーマと関わる「こころが折れないために、自分でできることは?」としている。これはメンタルヘルスの対策としては「セルフケア」という範疇に属する設問である。
 昨年2月26日に仙台市教育センターとの共催でおこなった際の「大喜利シンポジウム」で、野田正人さん(立命館大学教授 司法福祉学)が即興で「心は折れる。その前に曲がる」と書いた回答ボードを聴衆に見せたときに「なるほど!」と思わず膝を打った。
 《着眼点を変えてみることも必要です。心って折れるんですよ。ただポキッと折れるか、柳に風というかでは相当に違う。いかにしなやかで柔軟であるかも必要です。とくに若い教員は真面目すぎで、折れないかなって心配です。もう少し「ふざけたら」と思う。この回答は「自分一人じゃない」とか自分を客観的に見るという意味を、術として入れながら対処するということですが・・・折れちゃいけないというガチガチの思い込みが、かえって転んだときに大ケガをするんです。そういう時はすでに体が硬直状態とか緊張状態にあるんだから、折れる前に、もう少し曲がってもいいじゃないのかなぁ》と野田さんは軽口をたたいた。
 2010年以降に「折れない心をつくる○○」というキャッチコピーが出はじめ、それを表題にした書籍も多数出版されているが、そのいくつかは実はタイトルとは異なっている。例えば植西聰著「『折れない心』をつくるたった1つの習慣」(青春出版、11年)の「3章 無理にポジティブにならなくていい!」では、落ち込む・暗くなる自分の気持ちにふたをするのではなく「自分は今、悲しんでいるなあ」と客観的に自分の心を見つめることを提唱している。この野田さんのアドバイスもそのことを別の言葉で言い換えたものであるが、私も同感で、”心は折れることもあるものだ”という前提で、折れたときの回復力・復元力にポイントを置くこともが大事だと思う。
24時間教師をやめましょう!
 学校の教師は他の職種と比較してみると、個人差はあるにせよ、総体として真面目で模範的であることは明白だろう。また、いつも・どこでも教育者を貫くという「24時間教師」を演じている人が多い。
 キレてしまって不祥事を起こしたり、他人に迷惑をかけるような暴走をしてはいけないが、井上さんは暴走する前に「もっと自分の感情や気持ちに素直になろうではないか」と一貫して呼びかけている。《忙しい現場で仕事をするからこそ、自分の気持ちを大事にしましょう。・・・「こころは自由で」いいのです。「ムカつくなぁ」「こういう言い方する人、嫌いだなぁ」「早く終わってくれないかなぁ」など、お腹のなかでどんなことを感じてもオーケーです》(14ページ)
 井上さんの本には多くの事例(不幸にして倒れてしまった教職員)が掲載されているが、特に「第4章 メンタルヘルスを維持するために-予防から受診の判断まで」が、学校関係者に読んで欲しい部分である。ストレスのサイン、ストレスチェックの仕方、それらへの対応方法のほか、「不調を感じたら/不調を訴える職員が出たら」では、本人、あるいはまわりの同僚が、何をしたらよいかがわかりやすく具体的に示されている。
 なお、私がこの本をお勧めしたい理由はもう1つある。末尾に「付録 保護者対応のポイント」が簡潔に、16ページにわたって書かれているからである。井上さんのポイントは8つ。①敵と見なさない②「訴えには種類がある」と思いをめぐらせながら聞く③初期対応が大事④「本当は何を訴えたいのだろう?」と空想しながら聞く⑤こころは自由で⑥気持ちを短く伝える⑦目標・目的を共有しながら聞く⑧限界を設定する-。これらは一貫して「対応が難しくなるケース」が想定されている。
 例えば⑥は「あまりに相手の言葉がきついとき、ひたすら黙って聞くばかりではなく、自分の気持ちを短く伝えるのは有効です。『短く』がミソです。長々としゃべっては、その弁に怒りの矛先が向くことがあります。『そこまで言われると、キツイなぁ』『ちょっとわからなくなってきました』『よくわかる先生も呼びますね』(と、いったん席を外す)など、自分も相手もひと呼吸できる間をとれるといいですね」とアドバイスがある。
 ⑦は「対応困難な人の話は、それることも多いので、『今日は、○○についてお話に来られたのでしたね』と確認をはさみます。あまりやりすぎると、怒られることもあるので注意。終始うぇあかりにくかった話の場合、わかったふりはぜす、『今日は○○についてお聞きできました』『熱心に考えてくださっているのがわかりました』など、わかったことのみを伝えておくことも有効です。・・・わかりにくい話の時は、首をひねっていてもいいと思います。そして、わかったことのみを最後に伝えてお帰りいただくといいと思います」((155~165ページ)。

スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ニャン太郎

Author:ニャン太郎
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
COUNTER
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR