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「0次対応」とコミュニケーション術

 『内外教育』2015年6月26日の「普通の教師が生きる学校 モンスター・ペアレント論を超えて」より、「「0次対応」とコミュニケーション術」の引用。
小野田正利(大阪大学大学院教授)
Point
①「後悔先に立たず」ではあるが、あとになって振り返ってみるとトラブル発生以前の「0次対応」が鍵だと気づくころがある。
②2次段階・3次段階に発展しないようにと考えることも必要だが、逆に元(最初)に戻って見る姿勢も必要
③問題発生前によい関係をつくるヒントを学ぶ
0次対応
 保護者対応トラブルでは、担任教師などから管理職への報告・連絡・相談が重要であると説かれることが多い。企業などのトラブル対応マニュアルでも判で押したように、「ほう・れん・そう」が語られる。問題の発生の初段階から2次対応、場合によっては3次対応までを見据えて、トラブルの行く末や終着点の見通しを立てるためにもそれらには必要なことである。
 しかし、問題が大きくなってから、過去のことを悔やんだり反省ししたりした際に「あ~、あの時はこうすれば良かったかもしれない」と思い出しながら反芻すると、確かに反省すべき点は「初期対応」以前の「もう一歩前の段階」にもあったことに気づくことがある。例えば、相手の立場を推し量る力(イメージ力)の不足と、むしろ自分の立場の絶対視(時には保身)という傾向が、トラブルを誘発する原因であったりする。
 つまり1次トラブル段階より前の「0次対応」といったレベルでの受け止めや接触が基本であり、そうとらえると紛争状態にまで発展してしまったトラブルの構造がよく見えてくる場合もある。他人の思いを聴くカウンセリングの基本技法としての「受容(傾聴・共感)」は、実は「0次対応」ではないかと私は言い続けてきた(図参照)。

 トラブルを大きくしないために、第1次対応(担任団や生徒指導担当)→第2次対応(教頭・校長らの管理職)→第3次対応(教委や第三者機関あるいは訴訟)で気をつけるべきポイントはいくつもあるが、むしろ「0次対応」ともいうべき初期の、担任レベルでの対応でかなりのトラブルは防ぐことができるのではないだろうか。
コミュニケーション術
 大都市部を中心に若い教師が急増している今日、このことを具体的に分かりやすく説明するものがないだろうかと思っていたところに、小林正幸監修・早川恵子編著「保護者とつながる教師のコミュニケーション術」(東洋館出版社、2015年)がタイミングよく登場した。臨床心理学を専門としている東京学芸大学教授の小林さんは、私の主宰する新新・学校保護者関係研究所の古くからのメンバーである。この本では、保護者と教師の間に行き違いが生じやすい30の場面設定をして、その中で保護者の思いや不安を「保護者はこう考えている」として解説し、では教師としてどうしたらよいかを「こんな対応が望ましい」として助言する、いわゆるQ&A方式をとっている。そこに示される数々のクレーム・トラブルには実にリアリティーがある。
 例えば、「3.子どもの気持ちをくみ取れず、すれ違ってしまう」では《心優しく穏やかなマサヒロさんは、友達とグループで活動するのが苦手。小学校3年生の5月頃、保護者から、マサヒロさんがクラスで乱暴が言葉をかけられたり、苦手な鬼ごっこにつきあわされたり、馬鹿にされているという、抗議の電話がありました。担任は本人たちから話を聞き、謝らせた上で仲直りをさせました。その後は仲良くしているように見え、一段落したはずなのに、以前保護者から「マサヒロが毎日嫌な思いをしていると言っている」との訴えが続きます。保護者は前担任や養護教諭へも相談にきているようです。頭を抱えてしまった担任は、校長に相談し、校内委員会を開いて検討してもらうことにしました》という事案が載っている(24ページ)。この事例はむろん架空のものだが「ウチの学校と同じだ!」と感じられる教師も多いだろう。イジメ問題がいったん収束した(と担任は思っている)あとも、なおも親の訴えが続くというケースは確かに多くなった。
 担任は「仲良くしているし、大丈夫そう」と判断した。マサヒロくんは、担任があまり向き合ってくれないと感じている。親は、心配のあまり「今日は、学校で嫌なことはなかったの?」と何度も訊くので、マサヒロくんは逆に不快なことばかりを思いだして口にするようになる。親は「やっぱり!担任はどうして何もしてくれないの?」と不信感を募らせるという構図である。
 親の行き過ぎた不安感情が関わっているかもしれないが、この問題の解き方は、マサヒロくんが言葉で自分の状況を伝えることが苦手かもしれないと思い、イジメ問題が終結した後においても、配慮を重ねることが必要だったことに担任が気づくことで、具体的な方針を親と一緒に立てていくことにポイントがある。「このような事例の場合、訴えがあった側の子どもや保護者とは、継続して話を聞く機会を持つようにします」と述べ、以下のような具体的な方針を立てることが説明される。
 《①担任は放課後に5分間マサヒロさんと毎日時間を設けて話し、楽しかったこと、できるようになったこと等ポジティブな事を聴いてほめ、連絡帳で保護者に伝える。②家庭で連絡帳に書いたポジティブな事を話題にして喜んでもらう。③マサヒロさんが浮かない顔をして帰宅した場合には聴くようにし、不快な感情を言葉で受け止めてもらう。ただし、自分から言い出さない場合は、無理に聞き出さない。④スクールカウンセラー・教育相談担当教諭は保護者に寄り添い、不安や心配が軽減するように話を伺う機会を設ける》(26ページ)
上級編?いえ、基本編です!
 「えー、難しいよ!これって上級編なんじゃないの?」と思われるかもしれない。確かに上記の図でいけばこの事案はすでに「2次対応トラブル」直前まで行っているケースである。しかし「そこから3次トラブルに行かないようにするには、どうするか?」を考えるのは逆であり正しくないということだ。つまり、「1次対応」からさらに「0次対応」まで戻って考えることが、実は遠回りに見えるが、もう一度もつれた教師と子どもと保護者の関係を「紡ぎなおす」気づきが生まれることを伝えようとする。「問題が起きる前によい関係をつくること」(3ページ)-そのヒントが、この本にはたくさんちりばめられている。むろん、一筋縄ではいかない解決困難ケースもあるが「これらは扱いません」(8ページ)と断ってある。
 社会が変化したという側面もあるが、保護者の動向に過度に身構える教師の側にも問題がありはしないか?適切な形でコミュニケーションをとろうとせず言い訳から入って、不必要なトラブルに発展させてはいないか?教師が相手の保護者を「やっかい者」「モンスター・ペアレント」扱いすることで、解決の筋道を自らが閉ざすことになっていないか?
 具体的で分かりやすい本書は、保護者対応に苦手意識を持っている若い教師に読んでもらいたいし、せっかくならここに示される事例について、いっしょに眺めつつ、ベテラン教師から体験談を話してもらったり、別の対応方法を解説してもらったりするような使い方をお勧めしたい(そんな時間がとれる職場であることを祈りつつ)。

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