<変革2020> アクティブ・ラーニング(上)

 2017年1月8日の朝刊より、「<変革2020> アクティブ・ラーニング(上)」の引用。
◆受け身授業「能動的」に
 小中高校で教育内容の基準となる学習指導要領が大きく変わり、二〇二〇年から動きだす。柱の一つが、「アクティブ・ラーニング(AL)」の全教科での実施だ。教師が一方的に教えるのでなく、児童や生徒が主体的に学ぶ学習法という。ALとは何か。三回で伝える。まずは現場の実践から。
 「昔と今の地図を見比べ、違いを読み取る。どうして変わったのか考えられるようになろう」
 滋賀県草津市の松原中学校。昨年十一月、二年生の社会科の授業で、冒頭、水谷哲郎教諭は生徒たちにこう語った。生徒に配られたのは、草津市の現代と昭和二十年代の地図。一人一台渡されたタブレット端末に、気付いたことを書き込んでいく。内容は液晶プロジェクターに映し出され、クラス全員で共有された。
 「昔は田んぼが多い」「池が埋められた」といった書き込みから、水谷教諭は「なぜ、田んぼは減ったのか」など背景を考えさせたい変化を三つ選び、グループで話し合わせた。
 「田んぼを埋めて、家を建てたんやろ」「それ何で?」「工場とか建ったから」。議論が進むにつれ生徒の疑問も考えも広がる。生徒が答えを黒板に書き出すと、全面が埋まった。
 水谷教諭は、項目の関連性を指摘し、出なかった要素は補った。生徒に「なんで、そうなったんやろ?」と問い掛け、さらに深く考えさせていく。理解は、道路網の整備が工場立地を促し、人口増加につながったことにまで至った。
 生徒が課題を話し合う過程で教科書を読み、教え合い、学び合う。水谷教諭が十年前から続けているこうした授業は、まさにAL。教師側が一方通行で教えるのが中心の従前の授業との違いを、「私が予想する以上の答えが生徒から出てくる」と指摘した。
      ◇
 テーマは歴史認識や現代社会、国際関係などの複雑な問題にも及ぶ。
 名古屋市東区にある旭丘高校では昨年十一月、二年生の「日本史A」の授業が、生徒の話し合いを中心に進められていた。テーマは「韓国併合はやむを得なかったのか」。
 併合後から第二次大戦前の日本、朝鮮、台湾の経済成長率などのデータを見ながら、意見を述べ合う。担当する中西優徳教諭は「歴史の多面性に気付いてほしい」と言う。参加した高桑みなみさんは「話し合って考えると、理解が深まる」、関本大勢君は「知識が定着しやすい。時代の流れが分かる」と臆せず話した。
      ◇
 五教科にとどまらず、中高一貫の私立名古屋中(名古屋市東区)は、美術でもALを導入している。
 「私たちの名画鑑賞」と題した授業。ゴッホの「ひまわり」やクリムトの「接吻(せっぷん)」など、生徒たちは選んだ作品ごとに三~五人に分かれる。タブレットや書籍で作品の解説や魅力を調べ、色彩や構図といったポイントに着眼して話し合い、全十時間かけて言葉でまとめた。「なんとなくいいね」という印象だけで終わりにしない。
 ほかに「死刑」をテーマに社会科で学習し、国語で討論し、英語で表現する教科横断も、同中は進める。森田祐二教頭は、「ALは論理的思考を養う学習実践だ」と考える。
◆教師側のこつが必要
 ALは、学ぶ人が受け身でなく、能動的に取り組む学習法の総称だ。文部科学省は、その目的を「主体的、対話的で深い学びの実現」としている。
 数人の班で対話し結果を発表する、班を作らず自由に対話する、対話の相手を途中で意識的に変える、グループごとにまとめず個人で学んだ結果を振り返る-など、いろいろな手法がある。小学校の総合学習などで、ALと名乗らなくても実質的に取り入れてきた授業もある。
 高校教師として物理の授業などでALを実践してきた産業能率大の小林昭文教授は「教師が一方的に説明せずに、児童生徒の一人でも主体的に学ぼうという意欲が出れば、それはAL型の授業といえる」と話す。
 学習のポイントをプリントにまとめることで教師の説明の時間を短くし、その分を話し合いなどに充てる。授業の最後に「確認テスト」などの振り返りの時間も設けるのが小林教授の授業法。「話し合いを促す声のかけ方や、適切なテーマと時間の設定、ワークシートの作り方など、こつもいる。簡単ではないが、変化する社会に応じて教育も変わらなければいけない」
 ALが求められる背景を次回十五日に紹介する。
 (佐橋大、古池康司)
「学習指導要領」
 小中学校、高校で教える内容や目標を示した国の基準で、約10年に1度、改められる。2008年の改定では、学習内容を3割削減した「ゆとり教育」路線を修正した。中央教育審議会は次の改定に向け約2年かけて議論し、文部科学省は審議会の答申を受け、16年度中に改定する。実施は小学校で20年度、中学校は21年度、高校は22年度からとなる見込み。
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