<変革2020> アクティブ・ラーニング(下)

 2017年1月22日の朝刊より、「<変革2020> アクティブ・ラーニング(下)」の引用!
◆現場教師「どう進めれば」
 教える内容の量を減らさないことが、二〇二〇年度から順次始まる次期学習指導要領の前提だ。その下で、授業は児童や生徒が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング(AL)」へと、転換が図られる。どう進めたら良いのか、現場の教員は戸惑いながら授業の組み立てを考えている。
 「数学ができない生徒たちならどうするのか」「話すのが苦手な子にはどうするか」
 静岡県沼津市の市立沼津高校で昨年十一月、成岡正晴教諭(33)が実践した数学のALの公開授業を視察した県内の教員から、具体的な対応や課題を問う声が次々に上がった。
 説明を少なくし、代わりに生徒に自ら問題を解かせ、教え合い、話し合わせる授業。教員らは、うまくできた点や課題を指摘しあいつつ、これから直面するかもしれないさまざまな生徒や教室の状況に思いを巡らせて、考えた。
 高校で新学習指導要領が開始されるのは二二年度から。だが、すでに県内の市立高校五校は、昨年から、ALの推進で協力。各校は、それぞれ教科ごとに責任教員を指名し、その教員を中心に、校内外で授業法を研究したり、先進的な他県の学校を視察したりしている。教材も開発する。「基本方針が出てからでは遅い。今やらないと」と、市立沼津高校の川口孝博校長(64)は話す。
出版が相次ぐアクティブ・ラーニングの本
 ALの全面実施に向け、ここ数年、各地で動きが盛んになっている。書店にはAL関連の本が数々並ぶ。愛知県の高校教員が集まり、昨年十一月に名古屋市で開いた教育研究集会でも、ALが話題の多くを占めた。
 数学でALを実践した教員は、「生徒にはおおむね好評だった」としつつ、「期待したような成績の向上はなかった」「話し合いを嫌って保健室に行く生徒もいた」と報告した。
 授業の進め方や、話し合いが苦手な生徒への対応などの悩みが、複数の教員から漏れた。何を基準に評価すれば良いのかと疑問も上がった。教える内容を減らさずに、教え方を変えることへの負担感も聞かれた。
 河合塾が昨年十月に名古屋市で開いた教員向けの講習会に参加したある高校教員は、「一時間、ALをやっても、ふわっと消えていくだけ」と限られた時間の中で行う手応えのなさを明かした。
 東京学芸大の大森直樹准教授(教育学)は、「負担感の強い教育現場にさらに負担を強いる、問題の多い改訂だ」と指摘する。「プログラミング教育の必修化など教える内容が増える上、ALの実施が指導要領に記されることで、現場の裁量が奪われかねない。話し合う形を整えるだけの形骸化したALが広がる恐れがある」。そうした懸念の残る中でのALの導入だ。
 「やらなければいけないが、どう進めればいいのか」。現場は悩みながら授業を始めることになる。
◆納得・理解促す工夫を 形だけでは不十分
 ALの先進例として各地から教育関係者が視察に訪れているのは、横浜市にある私立中高一貫の大規模進学校、桐蔭学園だ。近年、受け身の姿勢の生徒が目立つようになっていたといい、二〇一五年度から、ALの全面導入を図った。
 推進役となる中学と高校の教員各十五人が、新学期前の三月に合宿し、ALに詳しい京都大の溝上慎一教授の指導を受けた。互いの授業を常に公開し、生徒の参加の度合いなど、五つの評価点を列挙したチェックシートを用い相互に観察。成功例も失敗例もすぐに共有する。
 実践から見えてきたのは、話し合うという形を整えるだけでは不十分だということ。授業の目的は、話し合いではなく、生徒のテーマに対する納得や理解だ。傍観する生徒が出ないよう、教員は生徒の理解度を把握し、時にパワーポイントなど機器を使いながら知識や技能を適宜補う。
 発問も工夫する。答えがすぐわからないレベルの疑問を生徒に投げかけ、議論を促す。話し合いやすい空気も普段からつくる。授業の最後に、学んだことを個人がしっかり振り返るようにする。
 「ALは学校ごとに、教員ごとにつくり上げる必要がある」と入試広報部長の佐藤透さん(57)は話す。
 (佐橋大、古池康司)
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