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児童養護施設と学校・前編

 『月刊JTU』2011年8月号に「ケースワーク『子どもの貧困』27」が載っていた。執筆は、奈良県公立小学校教員の伊勢和彦氏。タイトルは、「児童養護施設と学校・前編」。  これを読んで皆さんは何を感じるでしょうか?  引用します。  「伊勢先生、オレを殴り殺して」そう叫びながらAさんは職員室に駆け込んできた。授業中担任から注意を受け、素直に従えず、授業をサポートに入っている別の教員の指示にも反発し、教室を飛び出してきたのだった。彼は、私がこの学校に転勤してきた一昨年担任した子どもだった。担任して半月もたたない四月の半ば、彼は登校途中で行方不明になった。  小学校に上がる前までAさんは別の校区の幼稚園に通っていた。その向かいにある小学校に入学するのを心待ちにしていたと聞いた。そんな彼にとっては、突然両親に見捨てられたも同然の、入学直前での児童養護施設入所だった。「こんな学校、出て行ってやる」「みんな、ぶっ殺したる」そう口癖のように叫びながら、入学してから何度も暴れ学校を飛び出してという。  何人もの職員が、学校近辺を探し回りAさんを見つけた。私は教室でAさんを待った。シュンとして居室に連れてこられたAさんに「待っていたよ。先生は毎日あなたを待っています。この教室にあながた来るのを待っています。来てくれると信じて待っています。毎日どうか元気で来て下さい」とゆっくり話した。彼は小さく頷いてくれた。  その一昨年、学校は大きく動いた。校区にある児童養護施設から通学する子どもが急増した。特に二学期に転入生が集中し、夏休み明けに児童相談所から児童養護施設に措置された転入生だけで、13人増となった。  今、増え続ける児童虐待で、各地の児童相談所一時保護所では、満員状態のところも少なくない。だから根本的な要因が解決されないまま、家庭に送り返されるケースも多いと聞く。家庭に送り返すと親がつぶれてしまう。そんな状況を背負った子どもが、児童養護施設に措置される。本校校区の児童養護施設は、県内六施設の中でも規模が大きく、小舎制をとり唯一職員の泊り込みがある。それゆえより深刻な背景の子どもたちが措置されるケースが続いた。  施設から通う子どもの八割が虐待を受けていた。その影響で強烈な自己否定や大人不信が渦巻いていた。いくつものクラスで授業が成立しなくなった。騒乱状態。対教師暴力。幼いころの愛着が形成されないが故の大脳発達のトラブル。いわゆる『反応性愛着障害』。本校に転勤してきて始めて出会う事象に、どの教職員も戸惑い悩んだ。私にとっても今まで出合ったこともない状況が毎日目の前にあった。  ある日の放課後、校内の廊下でベテランの女性教員とすれ違った。彼女のクラスも複数の転入生を受け入れ、悪戦苦闘が続いていた。「先生、大丈夫ですか」と私の横にいた教員が声をかけた。  「もう限界です」つぶやいたその一言を最後に、彼女は学校現場を去った。
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