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ほめられると子どもは前向きになる

『楽しい算数の授業』(明治図書)2011年8月号より、小島宏(財団法人教育調査研究部長)先生の記事。
 詳しくは本誌をお読みください。

1 ほめることの意義
 ほめることには、さまざまな意義と効用がある。第一に、人間教育の一環としての意義が認められる。「教育の目的は画一を廃し、個々の能力を本人の長所と希望に沿って個性的に、自発的に、自由に発揮するところにある」と90年前に歌人与謝野晶子は述べている。ほめることは、自己効力感・有用感を高め、前向きな人間形成につながる。
 第二に、子どもの優れている点や長所、進歩の状況等(新しい小学校学習指導要領の学習評価の理念)を取り上げることにより、今後の学習や生活への意欲付けをすることができる。
 第三に、心理的に、欲求(所属したい、仲間から認められたい)、興味(好きになり結果的に上達する)、必要感(目的的な学習や行動をとる)、欲求水準(より高い目標にチャレンジする)、忍耐力(目標達成のため我慢できる)、持続力(最後までがんばれる)、自発性(言われなくても自分から取り組む)、主体性(自分の力で何とかする)など学習意欲にかかわる傾向を高めることができる。

2 注文をつけていいのか
 ほめることが、子どもを前向きにすることが分かった。では、逆に子どもに注文をつけることはいけないことだろうか。
 教育とは、子どものよいところを見つけ、知らせ、よりよく伸びるように指導・援助・支援するものであるとの主張がある。いわゆるほめる教育である。
 その一方で、不足していること、不十分なところ、直したほうがよいところを見つけ、知らせ、補い修正する指導・援助・支援こそが教育の真髄だとの主張である。いわゆる注文をつける教育である。
 ほめるだけが教育ではない。前者のみであると一面的、独善的な人間形成や教科学習になりがちだとい指摘される。かつては、後者の教育観が体制を占めていたが、これだけだと、指示待ちの消極的な人間になってしまうと批判される。
 どちらか一方をしゃにむに進めるものではなく、前者を主体に進め、「個性を生かす教育」(総則第1の1)を充実することが重要だということである。その上で、子どものよさや長所をいっそう伸ばすために後者によって補完していくのである。つまり、ほめることを重視し、ほめた事柄の質を高めるために、さらにほめることが多くなるように、必要な注文をつけていくのである。

3 何をほめるか
 ほめるということは、子どもの行為や発想などを肯定的に評価し、評価の結果を「ほめる」という手法をつかって子どもに伝えているのである。
(1)本物をほめる
 そこで、生活や学習の中にあるよさや長所、進歩したこと、努力していることなどきらりと光る事柄を見つけ、認め、ほめて、子どもを前向きにしていくことが重要である。
 その際、子どもが、ほめられたことを納得するような「本物をほめる」ことが求められる。何をほめられているのか具体的に伝わらない一般的、表面的、形式的なことでは、子どもの琴線に触れることはできない。
(2)算数授業のほめ言葉の類型
 単に、子どもを「できる・できない」で評価し、それに基づいてほめていると、算数の面白さ、楽しさを味わわせて、学習意欲を高揚させることにはつながりにくい。
 そこで、筆者の体験や研究グループの情報を基にして、「本物をほめる」ことができるように、算数授業における「ほめ言葉」の類型化を試してみよう。
 ①結果をほめる
 問題解決の結果について、できたかどうかを評価し、結果が正しく求められていればほめる、算数科では、結果の○×がはっきりすることが多いので、とにかく結果をほめることに偏りがちであるが、進歩している途上の子どもの「つまずきの中にあるよい点」を見逃す危惧がある。
 ②手順をほめる
 測定や作図をする、資料を集め表やグラフに整理する、文章題を解決するなどについて、手順が適切であることに気づいたらほめる。原理の理解を基に処理していることのすばらしさを見逃してはならない。
 ③態度をほめる
 見積もりをしている、見通しを立てている、筋道を立てて考えているなどの好ましい態度をほめ、数学的に考えることを促していく。
 ④発想をほめる
 既習事項を使って考えている。前にした算数的活動を生かそうとしている、長さの学習から重さの単位の存在を類推している、三角形の面積の求め方を既習の図形に帰着して考え出しているなど、子どもの柔軟な発想をほめる。正しい結果が得られなくても、発想のよさや着眼のよさのすばらしさを見抜きほめる。
 ⑤手がかりの見つけ方をほめる
 子どもは毎時間、未習の問題に取り組んでいる。何とか、自分で解決しようとしてその子なりにがんばっている。そこで、図や数直線に描いている、似た問題を解いたことがないか思い出してみる、学習済みの教科書やノートを振り返っているなど手がかりをみつけようとしている。このような手がかりの見つけ方をほめ、困難にチャレンジする心構えと方法を身に付けさせようとする。
 ⑥表現・説明をほめる
 子どもが何とか解決の糸口を見つけようとする段階のごちゃごちゃのノートの記述の中に、光るものを見つけることがある。自分の仕方や考え方を書いている子どもがいる。どのように考えたのか、なぜそれでよいか説明している子どもがいる。
 表現が不十分であっても、きちんと書けていなくても、表現・説明(証明)していることをほめ、自分の思考や判断を客体化し、見つめ、よりよくしようとしていることをほめるようにしたい。
 ⑦学び合いをほめる
 自力解決の後で、ペアやグループで情報交換をし、さらに全体で学び合いをすることがよくある。このとき、分からないことは質問する。よい点は学び取り、自分の考えをよりよく改める。付け足したり、異なる意見を提案したりする。さらに、もっとよくするにはどうするか考え合う。このような学び合いや高め合いに参加できたらほめる。
 他の人から学べ、互いに協同してよりよいものを創造できるようになることはすばらしいことである。
 ⑧友達へのかかわりをほめる
 友達のよい点を見つけ、本人に知らせるようにする。また、友達の間違いや不十分なところを指摘し、どのようにしたらよくなるか一緒に考えるようにしている。このような友達へのかかわりに気づいたら大きくほめるようにする。このことが、学習集団の傾向になったら、分からないことやつまずきを必要以上に恐れる子どもを少なくすることである。
 ⑨学習の振り返りをほめる
 解決過程を振り返り点検している。結果を確かめる、結論が求答事項に合致しているか確認するなどは、確かな理解や結果の保障につながる。振り返りをしていることや振り返りの仕方についてほめるようにしたい。
 ⑩学習のまとめをしていることをほめる
 学習のまとめについてほめることもある。
 分かったことは知識として、できるようになったことは原理やアルゴリズムとして、工夫や発想は考え方としてまとめれば、知識・技能を定着させ、数学的思考力・表現力などを伸ばすために有効である。学習のまとめや感想を書いてもらったら、その内容やまとめ方をほめることも重要である。

4 ほめ方・注文のつけ方
 ところで、ほめ方や注文のつけ方には若干のコツがいる。学級担任時代に体験的に知っていることであるが「ほめてから注文をつける」と受け入れられ、効果的である。この逆は、注文を緩和するために無理にほめたと受け止められ効果が薄い。よって、先によい点を明確に具体的にほめ、その後で、さらによりよくなるために注文をつけるべきである。
 ほめる時は、その時その場で、口頭で伝える。いいことを先送りすると効果が半減する。また、学級のみんなに紹介し、自信を持たせるとともに、模範例とする。
 ノートや学習シートにも花丸ではなく、よい点を見つけ、コメントを書くようにする。
 自己評価や教師評価に加え、時に子ども同士の相互評価を取り入れ、カードに記入して交換させるほめ方もある。友人の目から見た異なる視点からの「ほめ言葉」はことのほか嬉しいもののようである。
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