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「大丈夫です」

 『月刊JTU』2014年2月号より「ゆみさんのメンタル・スケッチ」⑤「大丈夫です」の引用。
 私は精神神経科の専門医として一般臨床(主治医としての立場)もさせていただいていますが、産業医としての仕事を主にしています。「それって、何をしているの?」と医者仲間の他科の友人によく聞かれます。産業医という言葉が耳にされ、関心をもたれるのはよいことなのか、とも思います。
 産業医業務は、健康診断、健康管理、作業管理や作業環境管理など多岐に渡り現実多様です。
 私が最近多く関わるのは、メンタル関連疾病の予防と、病気休職された方の復職援助です。
 メンタル関連疾病で休職された後、回復し復職をはたされる過程に関わるとき、こちらも大きな勇気や希望をいただくことも多く感謝しています。
 ただ、時折難しいなと感じることがあります。
 今回は相手が違うとはいえ、教職員の方々と共通すると思われる悩み、「大丈夫です!」をどう聞くか・あるいは聴くかということを取り上げてみます。
 休職前と復職前の面談では、表情や体調の改善は、確認が容易です。主治医の立場からの「復職就労可能」という診断書も出ました。
 ここから産業医が主に関わりますが、本人にも職場の仲間にも不幸な再発を避けるため、病気休職に至った過程を振り返り、今後似たことが起きたら、どういう意識・態度で乗り切ろうとされているかを、一緒に「言葉」で確認します。特にメンタル疾患では「再発の不安」の低減に有用な言語化です。
 職場外の家族の問題や、過重労働・ハラスメント等、職場の改善がなされたケースは言葉通りに聞きフォローします。
 が、多少なりとも職場でのストレス、それも人間関係のストレスについて語られる場合、休職前と復帰前で、語られる「職場について」の認識に変化がみられます。
 休職前の追い詰められた気持ちが回復すると、職場への希望もしっかりと言えるようになり、同時に「職場での出来事の受け止め方にこういうネガティブな偏りの傾向があったが、今は、こう思える」と言うようなポジティブな言葉が聞かれます。
 しかし中には、「自分が弱かったからで、今後は強くなります。周囲の人に問題なんて無い、大丈夫です。」、逆に「よく考えて出た結論は、自分が病気の原因は、○○さんの嫉妬に満ちた態度だ。倍返しできる強さを今は得たから、大丈夫です。」といった言葉に出会うこともあります。そうすると、「現在は体調回復し、主治医も就労可という段階であるし、それはそれで、『その人の現実』として100%受け止めるか。同僚や上司にヒアリングして、周囲から見るとどんな状況であったかを聞き、どこまで介入するべきか。」と悩みます。
 教育の現場でも、日頃を知っている程度によりますが、その方のまたは児童生徒の、「大丈夫です!」という言葉を疑うのも、100%信じて良しとするのもどうか、どのタイミングまで経過を見守るのが良いか、迷われることがあるのではないでしょうか。
 言葉はあくまで「地図」であって「現地」とは異なることを肝に銘じてはいますが、「余計なお節介は避けたいが、介入しなかったことで手遅れにならないか」と迷える子羊は、まだまだ産業現場の修行が足りませんね。
牧由美子(精神神経科医 労働衛生コンサルタント)

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